第2日 〜2009.6.14(日)〜

本渡バスセンター→牛深港→富岡港→本渡バスセンター

2日目の行程図と本渡バスセンターの時刻表
2日目の行程表 本渡バスセンターの時刻表  今日は天草下島を一周しようと思う。ホテルに荷物を置いて、ザック1つだけ背負って本渡バスセンターへ向かう。下島は東南側の海岸線を行くバスが少ない。
 バスセンターの時刻表には「本渡→楠浦→中田→牛深」の欄に、これから乗る海岸線といわれる牛深行きが書かれているのだが、これが1日2本しかない。上平行きに乗って、終点で乗り継ぐという方法を使っても3本になるだけ。
 下島一周のネックになる東南側は、朝の牛深行きに乗っていくことにしよう。北西側もそれほど本数が多いわけではなく、崎津と大江の2つの天主堂、両方をたずねることは休日のバスダイヤでは難しい。こちらは、バスを1本見送ると3時間ほど時間があるので、近くに資料館もある大江の方を訪れることにしよう。
 富岡から本渡への経路もいくつかあるが、何とか比較的海沿いを走る系統に間に合うようだ。残念ながら本渡の市街地をさけて、いちばん海側を走る経路だけは、乗り継ぎが悪く乗ることができないが、1日でほぼ下島を一周できるプランができた。
10.本渡バスセンター7:29→9:28牛深港(産交バス)1470円 熊本200か・371 日野
本渡バスセンターの産交バス 楠浦の眼鏡橋
フェリーろざりお 狭隘路を行く
島が見える 狭隘路ですれ違う  7:15頃にはバスセンターに着いた。日曜日とはいっても、朝のこの時間はバスが多い。熊本行きの快速バスに乗る人が、たくさん待合室にいた。やがて、牛深の行き先を出したリエッセが2台やってきた。LED表示のバスは、同時刻発車の牛深行き快速「うしお」号だった。幕式の「上平 牛深」と書かれているのが、目指す1日2本の海岸線牛深行きだ。
 本渡から乗ったのは自分だけ。楠浦というところでは、道路のすぐ脇に楠浦眼鏡橋という古い石橋が残っているのが見えた。道路も、ほとんどが狭隘路の連続。運転士さんに「この路線に乗ってみたくて、終点まで乗るのでよろしく」と声をかけたからか、所々で解説をしてくれる。牛深まで2時間、休憩なしで狭隘路を運転し続けるのだから、かなりの重労働だろう。
 運転士さんによると、昔は本渡から牛深まではどの道を通ってもこんな道の連続。だから、本渡から牛深というと1日で往復乗務ができず、1泊勤務だったのだそうだ。運転士さん曰く、この海岸線は「天草一、狭隘区間が長い路線」なんだそうだ。たしかにそうだろう。
 中田では、鹿児島県の長島・諸浦港とを結ぶ天長フェリーの「フェリーロザリオ」が入港したところ。ずいぶんモダンなフェリーだ。でも、そのフェリーを下りた道は狭隘路の連続。今日は日曜だからいいが、平日だと大型の冷凍トラックと出会ってしまい、何キロもバックで狭隘路を戻ることがあるとか。
 そんな狭隘路の連続にもかかわらず、途中で行き違った本渡行きは中型バスが使われていた。本渡を出て1時間半近く経った東浅海に着いて、ようやくお客さんがバス停に待っていた。
深海の街並み
牛深港と牛深ハイヤ橋
ハイヤ橋
休止中の海底観光船 蔵之元からのフェリー  牛深港の港の対岸には下須島という島がある。牛深ハイヤ大橋と通天橋という2つの橋で下島とつながっている。歩道もあるから歩いてわたれるのだが、どちらも大型船を通すためかなり高い位置に橋が架かっている。
 そのため、地元の方向けに牛深港と対岸の天附港を結ぶ渡船があるのだが、これが平日・土曜のみの運行。個人営業らしいので、臨時営業でもしていないかと発着している港へ行ってみるが、これまた運航休止した海底遊覧船がわびしく係留されているだけで、その姿はなかった。
 牛深西方に沈んだ軽巡洋艦長良の資料館などを見学して、次のバスまでの時間を過ごした。
長良記念館
11.牛深港10:55→11:44運動公園前(産交バス)650円 熊本200か・226 日野
牛深港の産交バス 湾に沿って走る  牛深港からは、今朝出発した本渡バスセンター行きに乗っていく。ただし経由は違い、魚貫・新合経由というもの。下島南部は、小さな半島がいくつも伸びているものの、その半島を回る道はない。県道は小さな半島の付け根を通ってはその先の湾に出て、再び次の半島の付け根を通るを繰り返す。そんな道を走っていくのがこれから乗るバスなのだ。
 やってきたのは、今朝乗ったのと同型のリエッセ。7人ほどの乗客を乗せて牛深港を発車した。先ほど歩いた、港に沿うように走ってから、右折して両側に住宅の建つ細道に入っていく。やがて、両側から崖が迫ってきてトンネルに入る。そのトンネルを抜けると、こちら側にも牛深の市街地があるようで、さっそく下車が始まる。その先で右折して、山の上の牛深市民病院に着くと、自分以外の人は降りてしまった。日曜日だから見舞い客なのだろうか。入れ替わりに乗ってきたのは2人だけだった。
 小さな半島の付け根を横切ると、左手に見えてきたのが魚貫湾。穏やかな海が広がっている。経由名にもなっている魚貫を過ぎたときには、早くも乗客は自分だけになっていた。その先でまた半島の付け根を横切る峠越え。やいらぎダム入口バス停付近は、かなり山の中といった雰囲気だった。下り坂を行くとまた海が見えてきた。今度は亀浦という奥深い入り江だ。二浦学校前バス停では左手に、本当に海に面して建っている小さな小学校を見ることができた。小さな峠を越えると、今度は早浦。鳥居の建つ小さな島が車窓からも見えた。
 早浦橋バス停からは、快速「うしお号」の経路にもなっている国道を走る。そのまま国道を行き、運動公園前で降りた。
湾の島に神社が見える
天草コレジヨ館(入館料 210円)
コレジヨ館入館券
天草コレジヨ館  運動公園の近くに、図書館に併設された「天草コレジヨ館」という、けっこう立派な資料館がある。コレジヨとは英語読みでカレッジ。神学校のことなのだとか。
 210円の入館券を買うと「ちょうど説明を始めたところですから、よろしかったら一緒にどうぞ」と声がかかる。中学生か高校生のグループが見学に来ていて、学芸員さんが解説をしてくれているようだ。
 1591年に天草コレジヨがこの旧河浦町の地に建てられ、天正遺欧四少年(伊東マンショ、千々石ミゲル、中浦ジュリアン、原マルティノ)が持ち帰った日本初のグーテンベルク式金属活字印刷機で、『天草本』と現在呼ばれている29種類の本が出版されたのだそうだ。
 概論としては高校の歴史で習った記憶はあるけれども、各論としてどのようなことだったのかは、正直ここで学芸員さんから話を聞くまで知らなかった。
 実際に印刷できるグーテンベルグ式印刷機の復元機が置いてある。当時の資料を基にドイツで復元してもらった物だそうで、ドイツにもこれほど精巧な復元機はないのだそうだ。『天草本』の実物も、キリスト教弾圧でことごとく廃棄され、現在では大英博物館に1冊あるだけだとか。
12.運動公園前12:48→12:55一町田中央(産交バス)160円 熊本200か・423 日野/J-BUS
運動公園前の産交バス 運動公園前バス停  実際に、天草コレジヨがあった場所は、旧河浦町の中心地、一町田(いっちょうだ)にあるのだという。そこで、時間もあるし昼食代わりに何か買えるかもしれないと、一町田中央まで行くことにした。
 乗車するのは、富岡港から河浦高校へ行くバス。運動公園の上に河浦病院があるので、枝線折り返しでここまで足を伸ばしてくれるのだ。やってきたのは、今日3度目のリエッセ。乗客はなかった。
 ここから枝線折り返しのバスに乗る人は少ないのか、運転士さんから「一町田方面ですけど間違いないですか」と聞かれる。「コレジオ跡を見たくて」というと「一町田中央で降りればすぐです」と教えてくれた。さらに「富岡からずっと運転してきて、お客さんが2人目です」という。いくら日曜日とはいえ、そんなに利用者がいないか。富岡港からここまで、すでに1時間半以上かかっているのだが。やがて郵便局などが建つ通りに入り、橋の手前、小学校の脇にある一町田中央で降りた。
コレジヨ公園(コレジヨ跡)
コレジヨ公園
 小学校の脇を流れる川の土手を歩いて行く。対岸の河浦支所へ渡る歩道橋があり、その一角が公園になっているのだった。小さなモニュメントと、説明版があった。コレジヨ跡というだけあり、本当に跡だけなのだろう。このモニュメント以外に歴史を語るものを、その場で見つけることはできなかった。
13.一町田中央13:25→13:58天主堂入口(産交バス)530円 熊本200か・423 日野/J-BUS
一町田中央の産交バス 海上コテージ
崎津教会 一本松
狭隘トンネル  先ほど運動公園から乗ったバスが、富岡行きになっており返してきた。もちろん、運転士さんも同じ人。「大江の天主堂まで乗るのでよろしく」と声をかけておく。一町田の街中で2人ほどの乗客を乗せていく。
 先ほどと同様、いったん河浦病院まで寄り道をしてから、崎津方面へ国道389号線を進んでいく。道路沿いに「海上コテージ渡船乗り場」の看板が見える。いったい何だろうと思っていると、左手に広がる羊角湾の小島にコテージが建っているのが見えた。
 トンネルを抜けると崎津。ここで下車があったので、停車中に崎津天主堂をゆっくり見ることができた。このまま国道のトンネルへと思ったらそうではなく、左折して天主堂方面の細道を走っていく。この先、しばらく国道から離れた海沿いの旧道を走っていった。対岸に見えるのは、今走っている天草下島。湾が奥深くまで入り込んでいるのだ。
 軍ヶ浦を過ぎると再び国道に戻るが、トンネルを抜けるとまた左側の細道に入っていく。大江郵便局前を過ぎると、運転士さんから「もうすぐですよ」の声がかかる。桑鶴でいったん国道に戻って、またすぐ左の細道に入ったところが大江天主堂バス停だった。
天草ロザリオ館(入館料:まちのおもちゃ館とセット券470円)と大江天主堂
バス停から見た大江天主堂 ロザリオ館
天主堂前から海を眺める 大江天主堂  大江天主堂バス停は、丸い屋根のコンクリート造りの待合室があって、その中にポールが立っていた。壁には色ガラスが十字にはめ込まれてた。
 まずは昼食だ。ロザリオ館の受付で食事のできるところを聞くと、近くのちゃんぽん屋さんを教えてくれた。ようやくお腹も落ちついて、資料館の見学。なかなか来ることのできないところだから、まちのおもちゃ館とのセット券を購入すると、まずおもちゃ館から見てくださいとのこと。
 日本各地の郷土玩具の展示はそれほど感動しなかったけれども、節句人形の天草土人形の母子像の作り方と展示はなかなかよかった。これがマリアさまの聖母子像の代わりとして使われていたのだという。それと「五足の靴」関連の展示。天草土人形と五足の靴館といった方がいいのではと感じた。
 その後、ロザリオ館でしっかり勉強をしてから、ゆっくりと坂道を歩いて登っていく。民家の屋根の間から、大江天主堂が少しずつ大きく下の方まで見えてくる。登ってきた道を振り返れば、大江の街並みの向こうに海が見える。
 ようやく目の前に1933(昭和8)年に建てられたままの大江天主堂が姿を現した。建物の脇には、この天主堂建設に多大な努力をした、フランス人宣教師ガルニエ神父の像が建ったいた。帰りは一直線に山を下りる遊歩道を歩いた。
大江天主堂
14.天主堂入口16:44→17:43富岡港(産交バス)920円 熊本200か・674 日野
天主堂入口の産交バス まもなくトンネル付け替えになる
トンネル 天主堂入口バス停  17時の閉館時間が近づいて、遊歩道脇の売店も閉店になり、駐車場も閑散としてきた。それでも、まだ明るいからかレンタカーでやってくる観光客がいる。車を降りると、急ぎ足で遊歩道を駆け上る。
 やってきたバスは、またもやリエッセ。行き先表示がLEDになっている点は今までとは違うけれど、前中ドアという点は同じだ。
 天主堂入口を出ると、そのまま旧道を走る。これがすごい。バス1台がやっとの細道を、つづら折りを繰り返してどんどん登っていく。4回のつづら折りでかなりの高さまで登った。そのまま短いトンネルを抜けると下り坂に。高浜の市街地に入っていく。
 市街地を過ぎて、老人ホーム春光園バス停でUターン。この先のトンネルが通行止めなのだそうで、バス停3つほど戻って国道へ出て、その国道を走っていく。
 下田温泉付近では、新しいトンネルを造っているところがあった。今走っている道には、何とも複雑な形のトンネル(写真左2段目)があり、ここを走るのも新トンネル開通までになるのだろう。
 左側にずっと見えていた海も、苓北の火力発電所を過ぎると見えなくなった。国道が内陸に入ったのだ。国道をそれて苓北中学校前などを通って、左折して富岡港への道を走る。路線図を見ると、上りと下りで停留所が違っているから一方通行になっているのかと思ったがそうではなかった。
 富岡の市街地から富岡港までは、国道とはいっても大型車のすれ違いが簡単にできない。そこで、各方面からのバスが集中する区間は、あえて上りと下りで通る道を分けて、バス同士がすれ違うのを避けたのだという。
火力発電所が見える
富岡港のフェリー
富岡港のフェリー 積み込みは降りるように  富岡からは長崎・茂木までのフェリーが出ている。ちょうど、茂木行きのフェリーが出る時間。そのフェリーが止まっているのだが、どうやら今の時間は干潮のようだ。
 岸壁よりも船がずいぶん下の方に見える。自動車を後部から積みこんで、そこから降ろすタイプのフェリー。自動車の甲板への積み込みは船の中に降りていくように、下り坂をバックで積み込んでいる。慣れないと、この積み込みはちょっと怖そうだ。日曜日の午後ということで、利用者はそこそこいる。次々とバックで車が積み込まれていく。
15.富岡港18:05→19:09本渡バスセンター(産交バス)890円 熊本200か・294 日野
富岡港の産交バス 長崎県の雲仙が見える
橋の向こうは通詞島  今日乗る最後6本目のバスは、またしても前中ドアのリエッセだった。今日乗ったのは全部リエッセ。やっぱり天草のバスはリエッセが多いというのは、本当だったようだ。
 富岡港から本渡バスセンターへ行くバスは、何通りかの経由があるけれども、これは直通便としては一番海沿いを行く鬼池港経由。富岡港を自分だけを乗せて発車する。運転士さんによると、日曜日の鬼池港経由はほとんど利用者がいないとのこと。ところが、その予想を裏切って、富岡の市街地に待ち人がいた。
 慈恵病院前を過ぎると、左手に海が見えてくる。しばらく海を見ながら、バスは走っていく。そのうち左手に島が見えてくる。通詞島(写真左)という温泉もある島で、天草下島とは橋で繋がっている。残念ながらバスは島へは入らず、島の入口に通詞バス停があり、そこで市街地から乗ったお客さんが降りていった。
 そこからしばらく行くと、海の向こうに高い山が見えてくる(写真上)。あれは島原半島の雲仙の山々。今朝は海の向こうに、鹿児島県の島を見たのだが、今は海の向こうに長崎県の半島を見ている。バスが走っているのは、熊本県の天草。
 通詞からは天草空港のある内陸の県道を行く便が半分近くある。この便は、そのまま海沿いの国道を行く。鬼池港からは島原半島の口之津までフェリーが出ている。ここにも1人待ち人がいた。大きなバッグを持っているからフェリーから乗り継ぎだろうか。

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